『ヒトラーとケインズ -いかに大恐慌を克服するか』 武田知弘
おすすめ度★★★☆☆
大学の課題で読んだ本ですが、非常に面白くすらすら読めました!!
簡単にいうとこれは、不況時に、仕事の無い人達に対し政府が投資し、何か仕事を与える(有効需要の創造)ことで、失業者を減らすべきという考えです。
【内容】
共通点を上げていくと・・・
・経済の中で最も悪いものは失業だという思想
ケインズ→有効需要の理論を提唱し、不況期は政府が財政出動をして有効需要を
創出し失業を減らすべきと考えている。
ヒトラー→ドイツ経済が破綻し、失業率が34%の中、アウトバーン等積極的に
公共投資を増やし、失業率を一気に低下させた。
・マネーゲームや投機(現代でいうFX等のハイリスクハイリターンの金融商品)を
規制すべきだという思想
イギリスもドイツもマネーゲームにより、大きな被害を被ったからだ。イギリスでは貿易超過が続いて失業者が増大し、ドイツではハイパーインフレの原因となった。ヒトラーがユダヤ人を迫害した理由の1つとして、このマネーゲーム批判がある。
(ユダヤ人は投資が得意で大金持ちの民族として有名だった)
・金本位制から脱却すべきという思想
金本位制・・・金(gold)を通貨価値の基準とし、自国の通貨と金を一定比率で
交換する制度
ドイツ経済の金融危機の原因は、金の流出にあった。実際にヒトラーが通貨制度を採用して以来、金融危機やインフレは起きなかった。
・資本主義と社会主義の中間を目指している
・格差社会の批判
・ユダヤ人と上手くいかない
ヒトラーはいわずもがなだが、意外なことにケインズもユダヤ人と因縁があった。
ユダヤ人はケインズの理論や提言を批判する人が民族的な背景から多い。
まだまだあるが、ざっと上げただけでもこれだけある。
ケインズとヒトラーという別方面の人同士を比較することで、ヒトラーを改めて別の側面から考察していくという本です。
【感想】
この本を読むまで、ヒトラー=ユダヤ人迫害というイメージがありました。
ほとんどの人がそうだと思います。
しかし、この迫害には彼の立場から考えると真っ当な理由があり、また彼自身経済面では素晴らしい政治家だった等歴史の教科書には触れられない側面がいくつかあります。
(理由があろうともホロコーストは許されるものではありません)
このように、出来事や目にすることを鵜呑みにするのではなく、他の側面からの切り口や背景があることを想像できるような人になりたいと思いました。