小説 仮面ライダーファイズ ネタバレ考察
TV版との設定の違い
・スマートブレイン、デルタは存在しない
・カイザギアは無数にある
・ドラゴンオルフェノクの正体
・スパイダーオルフェノクの正体
・結花が海堂に惚れていない
・結花が喋れない
・結花の境遇(TV版より酷い)
・木場、結花、海堂のオルフェノク覚醒のきっかけ
この小説は、TV版の脚本の井上さんが本気を出して書いたもの。つまり、朝8時に放映するとか、子供向きにしなければならないなどを一切考えずに仕上げたものです。
そのため、こっちが井上さんが書きたかった「真」のファイズといえます。
TV版より、人間対オルフェノクの構図が意識され、それ以外は全てそぎ落とした感じです。
また、TV版より残酷でエロい描写がたくさんあります。とても子供に見せることができる内容ではありません。確かR15とかに指定されていたと思います。
【内容】ネタバレ注意!!
主な登場人物
・たっくん
・真理
・啓太郎
・木場
・海堂
・結花
・草加
・沙耶
・勇介(啓太郎と結花の子供)
主人公は真理。
これだけです。シンプルです。しかしとても奥深く、これが本当のファイズです。
時期は、本編で海堂がオルフェノクに覚醒してすぐくらいです。
真理と木場が付き合い始めます。
しかし、お互い過去を隠しあっているため、2人の間には大きな溝ができます。
(真理:流星塾生で、親がいない 木場:実はオルフェノク)
海堂「お前、マジで相手の女に惚れてんのか?もしかして、自分が人間であることを確認するためにその女を利用しているだけなんじゃないのか?」
非常に本質をついた発言ですね。
海堂はオルフェノクの中でも、最も人間らしく、普段おちゃらけている中時折本質をついた発言をします。そして、木場の理想である人間とオルフェノクの共存を実現している存在なんです。実際人間を殺していません。(事故で1人殺した)だからかっこいいんです。
そしてたっくん、啓太郎、真理、木場、結花、海堂が6人で初めて顔を合わせます。
本編と同じく啓太郎は結花に惚れます。
ここで、たっくんがギターを披露。これは本編に無い場面ですね。
そして時が過ぎ、真理は流星塾の先生に呼び出されます。
ここで、一度流星塾から里子に出された子供が全員流星塾に戻ってきていることが判明。なぜなら、里親が全員殺されたから。
真理の里親も例外ではない。
謎を解き明かそうとしているときにオルフェノクに襲われ、先生が死ぬ。
このタイミングで草加が登場。
そして、真理をレイプします。衝撃的過ぎる。
ここで、本編で語られていない伏線が回収される。
草加の記憶でボートに流されている場面と、手を頻繁にウェットティッシュで拭くことだ。
草加の父は草加が幼いころに失踪し、母の手1つで育てられたため、草加は母のことが大好きだった。
2人でボートに乗っている時、ボートが転落した。草加は母に助けを求めたが、自分が生き残ろうとした母は草加の手を振り払う。草加が激流の中から岸にたどり着いた時、掌に一筋の傷ができた。その傷は長いこと癒えることなく血を流し続けた。
そのため、ウェットティッシュで手を拭くのだろう。
また場面が変わり、啓太郎と結花にオルフェノクが襲い掛かる。
ここで仕方なく結花はオルフェノクに変身。
啓太郎に招待がばれます。
そんな結花を優しく受け止める啓太郎。
本編と同じ流れですね。
そして結花が妊娠します。
この妊娠は、自身がオルフェノクであることがネックで真理と別れた木場の、人間とオルフェノクの共存という理想を実現させる最後のチャンスだと木場は捉える。
そして場面が変わり、たっくんと木場がお互いの正体を知る。
これはTV本編よりかなり早いですね。
TV版の見どころは、この2人の誤解が重なり、何度も因縁の戦いをしているとこなんですけどね。
そして、また時が経ち、草加は真理に拒否される。
怒り狂った草加は木場を殺そうとする。
木場がオルフェノクに変身する瞬間を真理に見られる。
また時が経ち、真理は流星塾の里親事件を調査する。
すると、まさかの沙耶が犯人で、しかも正体はドラゴンオルフェノク。
動機はいつまでも流星塾と一緒に過ごしたいから。
サイコパスです。
これは個人的にちょっとショック。
TV版の沙耶とキャラが違い過ぎる・・・
そして、カイザは1人じゃないことを知る。
一方、結花に対し、複数のカイザが襲い掛かる。
木場の目の前で草加が結花を惨殺。
木場は人間に絶望し、理想と人間であることを捨てる。
(TV版と劇場版でもそうだったように、ここで木場は夢をあきらめてしまう。
ここが木場の黒い部分でもあり魅力でもある。)
しかし、妊娠した子供は無事生まれ、啓太郎達のもとに。
人間を捨てた木場は草加に戦いを挑む。
人間を完全に捨てたことにより、電撃態のホースオルフェノクに覚醒。(激情態とは別)
「もうだいじょうぶだ。きっとまりちゃんがたすけてくれる。いつものように、ぼくの手をにぎって、たすけてくれる」
描写グロすぎ。トラウマレベル。
そして、たっくんvs木場へ。
(これは人間であることを捨てなかったオルフェノクと人間であることを捨てたオルフェノクの闘い。ファイズの象徴といわれる構図の最終局面。TV版の最終話のたっくん対木場と劇場版のファイズ対オーガと同列)
めっちゃ強くなった木場はファイズギアを破壊。
すると、たっくんが真理の前でウルフオルフェノクに変身。
ウルフオルフェノクの姿で木場にとどめをさす。
木場は死ぬ。
本編やTV版との大きな違いは、木場が自分が理想を捨てたことを後悔していないことだ。
やっとオルフェノクの呪いから解放されるという思いが強い。
たっくんもとどめをさすことに一切ためらわなかった。
木場との関係性がTV版と劇場版より浅いのもあるけど、どの作品よりも木場が一番人間を捨てたのがこの作品だからではないだろうか。
(TV版は迷いながらも、自分がどうあるべきか自分で答えをさがそうとする。劇場版は改心。小説版は死ぬシーンでオルフェノクであることをやめることができたことに安堵)
そしてラストシーン。
たっくんは真理を背負って歩く。
ここで、本編で語られなかった伏線2つが回収される。
①真理は流星塾時代、なぜ草加や澤田から優しいと言われていたか
これは、両親を失った火事で自分を助けてくれた男の人のように、困っている人を助けていく姿勢で正しく強く生きていこうと誓ったからです。
②たっくんのオルフェノク覚醒、ねこじた
実はこの①の男の人はたっくんなんです。真理を火事から助けたことで自分が死にます。ここでオルフェノクとして蘇り、火事が原因で死んだので、ねこじたになりました。
そして、雪が降る中でたっくんは真理にギターを弾いて聞かせる。
しかし、オルフェノクとしての寿命が限界のたっくん。
そんなたっくんを今度は真理が支えて歩いていく・・・
ここまでが、「異形の花々」という小説に収録された話で、今回の小説はこれに5年後のエピソードを追加したものです。
5年後、真理は夢を叶え、美容師に。啓太郎は両親を追いかけアフリカに。海堂は消える。(おそらく、オルフェノクの寿命)沙耶も消え、草加は死ぬ。
真理は1人で勇介を育てる。
しかし、勇介はオルフェノクとのハーフで、5歳なのに体が高校生。
社会情勢としては、オルフェノク対策委員会という公認のカイザ部隊が発足し、オルフェノクはほとんど生き残っていない。
つまり、劇場版と真逆の状態。
そのオルフェノク対策委員会に勇介が拉致される。
そこで勇介は「光る人」に変身してカイザと戦う。
(オルフェノクでも人間でもない別の存在)
何とスパイダーオルフェノク。(多分容姿は本編と違ってより蜘蛛に寄せた感じ)
勇介と草加の戦いが始まる。
しかし、灰化が進行し、変身できなくなる。
「あの時誓った正しく生きるという約束を守るために自分はどう生きればいいのか」
「巧に背負われて火事を脱出したあの時から自分は何も変わっていない」
「じゃあこの背中から降りよう。まずはそこから始めよう」
真理は背中から降りてそっと巧の手を握った。
どうするつもりだ? 巧が尋ねる
分からない と真理は答える
でも行ける所まで、行ってみようよ。
これで物語の幕が閉じます。
パラダイス・ロストのラストシーンと重なって、感無量です。
主人公の真理が自分の足で生きていくことを誓い、成長して終わるという流れですね。
TV版とパラダイス・ロストは助けてもらいっぱなしだけど、小説版では、自分の足で歩くことを決意し、光を目指して歩いていきました。
同じオルフェノクの生き残りの海堂と沙耶は灰化したっぽいけど、たっくんがどうやって再生したのかは語られず。
個人的な推測では、真理の強い思いがたっくんを再生させたんだと思います。
555ファンなら絶対に読むべき一冊。
これが「真」のファイズです。
TV版と劇場版の方が面白いけどね。